ひじきの栄養価とその効果について

ひじきは、ホンダワラ科に属する褐藻類で、北海道の南部から九州にかけて広い範囲で収穫されます。小枝のみを集めたものを芽ひじき、茎上の長い部分が入ったものを長ひじきといいます。収穫時期は春先で、この時期を過ぎると葉が硬くなりすぎるため、多くは乾物として流通しています。味、香りがたんぱくで調理しやすいため、煮物料理などに広く利用されている食材です。

ひじきに含まれる栄養素とは? 

ひじきの1人分(煮物1人分・戻す前の重量7g)はエネルギーは約10kcalと、低カロリーな食品です。ひじきには、どのような栄養素が含まれているのでしょうか。三大栄養素、ビタミン、ミネラルという順番でみてみましょう。

まず、たんぱく質についてですが、アミノ酸スコアは、70です。アミノ酸スコアとは、食品中の必須アミノ酸の含有量比率を評価する値のことで最大値は100です。ごはん(精白米)のアミノ酸スコアは、61ですから、ごはんより少し高い数値です。乾物に含まれるたんぱく質は約10~20%であり、その含有量は生育時期の海水の栄養状況に左右され、たんぱく質含有量は12月~1月が一番多くなります。
脂質については、乾物の場合で0.1~5.2%程度とほかの食品に比べ低い含有量です。脂質の脂肪酸組成は、多価不飽和脂肪酸が豊富であり魚介類と類似しています。
炭水化物は、乾物の場合で41~65%を占め、その大部分は多糖類であり、その40%以上が食物繊維です。
ひじきを含めた海藻類は、ヨウ素やナトリウム、カリウム、カルシウムを多く含んでいます。中でもひじきには、ヨウ素やカルシウムが多く含まれています。
ビタミンについては、A,B1、B2、B6、B12、ナイアシン、葉酸、C、Eなど多くのビタミンを含んでいます。ひじきに含まれる栄養成分は野菜類と同様、食物繊維、ミネラル類、一部のビタミン類などがあり、私達の健康維持に欠かすことのできない食品と言えます。

私たちの体への影響

ひじきに特に多く含まれる栄養素として、ヨウ素、鉄、食物繊維についてみてみましょう。

甲状腺ホルモンを作る材料になるヨウ素

ヨウ素(ヨードとも呼ばれている)は、成人の体内に10~20mg程度含まれるミネラルで、そのほとんどが甲状腺に存在します。食事から摂取したヨウ素は胃と腸で吸収され、血液から甲状腺に取り込まれます。甲状腺は、生体の代謝維持に必要なホルモンを分泌していますが、ヨウ素は甲状腺ホルモンの一種であるチロキシンやトリヨードチロニンを作る材料となります。これらホルモンの生理機能はまだ完全にはわかっていませんが、主にたんぱく質の合成や酵素作用に働きます。基礎代謝を促したり、酸素消費量を増加させたりと細胞の新陳代謝を担っているので、成長期には発育促進、成人では基礎代謝を促進する役割があると言えます。

ひじきのヨウ素は危険? ヨウ素を多く摂取している日本人

ヨウ素は海藻類に多く含まれるため、世界的には不足しやすい栄養素と言われていますが、日本人は世界でもまれなヨウ素を多く摂取している国と言われています。私たちの食事では、例えば味噌汁や煮物など、昆布だしを使用しているものが多くあることに気が付きます。昆布だし100mlに含まれるヨウ素は、5400㎍と1食分のひじきに含まれる量よりもさらに多いです。
ひじき1食分(7g)に含まれるヨウ素の量は、3150㎍です。これに対し、日本人の食事摂取基準2015年版のヨウ素の推奨量は、130㎍/日、耐用上限量は、3000㎍/日です。ヨウ素は、ひじき以外にも含まれますが、毎日必ずひじきの煮物などを小鉢1杯分食べることは少ないと考えられますので、問題なさそうです。​​​​​​​しかし、1年間で昆布だしからヨウ素28mg/日(28000㎍)を摂取した事例があります。このような過剰摂取となった場合、通常はどのような影響があるのでしょうか。ヨウ素の過剰摂取は甲状腺ホルモンの合成量の低下による甲状腺機能低下、重度の場合には、甲状腺腫が発症するといわれています。しかし、この甲状腺腫症は、ヨウ素が不足しても発症する症状でもあります。過剰摂取でも、摂取不足でも同じ症状を発症してしまうヨウ素ですが、日本人のヨウ素摂取の形態は極めて特異的であるために、ヨウ素過剰摂取の影響を受けにくいと考えられています。​​​​​​​

ひじきの鉄分について

ひじきに多く含まれるとされてきた鉄は、ミネラルの一つであり、ヘモグロビン(赤血球の中に存在するたんぱく質)や各種酵素を構成します。また、赤血球の成分として全身に酸素を運ぶ重要な役割があります。その欠乏は貧血や運動機能、認知機能の低下を招くことがあります。また、女では月経血による損失と妊娠中の需要が増大し、その必要量に及ぼす影響は大きなものがあります。

​​​​​​​ひじきは、鉄分が豊富な食品として親しまれてきましたが、現在の食品成分表では釜の種類がステンレスの場合、1食あたりの鉄の含有量はほうれん草50gの約半分0.4mgです。釜の種類が鉄の場合は、1食あたり3.9mgとなっていますが、現在、釜の材質の多くはステンレスです。

日本食品標準成分表2015年版(七訂)では、「『ほしひじき』は、『ひじき』の原藻を煮熟(蒸し煮)後、乾燥した製品である。煮熟用の釜の材質はステンレスと鉄にわけられ、加熱時間は1.5~6時間である。そのため、釜の材質の製品への影響が考えられる。」とあります。ひじきの製造過程において、鉄製の道具を使用しなくなってきているため、このようにひじきの鉄の値が低くなったと考えられます。なお、国内産か海外産かなど産地の違いによっても鉄の含有量は違うようです。

排便をスムーズにし、生活習慣病の予防との関連を持つ食物繊維

ひじきに多く含まれる食物繊維にはさまざまな働きがあります。食物繊維には、不溶性のものと水溶性のものがあります。不溶性食物繊維は、腸の動きを盛んにし、摂取した食品の通過時間を短縮させ、便の量を増加させ、便の排泄を促します。こうした作用は、腸内環境を改善して便秘や腸の病気予防に役立ちます。水溶性食物繊維の主な働きとしては、水分を吸収して膨張し、摂取した食品の胃での滞留時間を長くさせること、小腸で糖が吸収させる際に、水溶性食物繊維によって糖が消化酵素と接しにくくなり、吸収に伴う血糖値の上昇をおだやかにします。更に、コレステロールの吸収も妨げ、体外に排出されやすくします。これらの作用は、糖尿病や脂質異常症の予防、改善に役立つと言えるでしょう。また、海藻類に含まれる食物繊維の一種のアルギン酸は、コレステロール、および血圧低下作用、整腸作用が知られており、抗腫瘍作用も期待されています。

「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、「食物繊維の摂取量との関連が最も明らかになっているのは心筋梗塞である」と記述されています。食物繊維の摂取量が少ない人では、心筋梗塞の発症率や死亡率、糖尿病の発症率が高いなど、生活習慣病との関連があるとされています。

私たちは1日にどのくらいの食物繊維を摂取したら良いのでしょうか。「日本人の食事摂取基(2015年版)」では、18~69歳の1日の摂取目標量は、男性で20g以上、女性で18g以上とされています。例えば30歳女性の1日の目標量をひじきだけで摂取するには、戻す前の状態のひじきを420g摂取しなければならず現実的ではありません。食物繊維は、多くのやさいや穀類、いも類、きのこ類、アボカドなどにも多く含まれるため、様々な食品から食物繊維を摂取することができます。

ひじきの食べ方

乾燥ひじきの場合は、水につけて戻します(20~30分)。戻すと元の重量の8倍程度になります。急いで戻したいときは、鍋に水と乾燥ひじきを入れて中火にかけ、沸騰直前で火を消して2~3分好みの固さになるまでそのままおき、底の砂などが入らないようにひじきをすくい上げ水気を切ってから調理します。

・煮物:大豆や人参などと一緒にだし汁、しょうゆ、砂糖と共に煮る。

・サラダ:ゆでたひじきとクレソン、粒マスタード、しょうゆ、オリーブオイルと一緒にあえる。

・炊き込みご飯:もどしたひじき、アサリの水煮缶、にんじん、しょうゆなどと一緒にごはんを炊く。

食事においては、バランスがとても大切です。ある食品をだけを大量に食べるけれど、ある食品は全く食べないという食事ではなく、様々な食品を選択し、食事を楽しみましょう。

参考文献

・『食べ物と健康 食品の栄養成分と加工』 同文書院  國崎直道 西塔正孝2014年
・日本人の食事摂取基準 2015年版
・『新版 食品学Ⅱ』 建帛社 田所忠弘 安井明美 編著2016年第二版
・『調理学 改訂第2版 -健康・栄養・調理―』 柳沢幸江 柴田圭子 編著 2016年 
  株式会社アイ・ケイ・コーポレーション
・『栄養素の通になる 第4版』 上西一弘 2016年第四版 女子栄養大学出版部
・『調理のためのベーシックデータ 第4版』 松本仲子 監修 女子栄養大学出版部



=============================

栄養学の基礎がしっかりと学べて、家庭や職場で役立つ正しい知識が身につく「栄養検定【通信・WEB講座】」の受講もオススメです。

栄養検定【通信・WEB講座】はこちら

日本栄養検定協会では
毎週月曜日、午前8時に栄養や食についての情報を発信中です♪
ご登録いただけましたら、毎週じっくりとお楽しみいただけます^^

こちらからご登録くださいね!

栄養に関する情報や、協会からのご連絡が届く公式LINEの登録は
こちら

栄養に関する情報や、協会からのご連絡が届く公式LINEの登録はこちら

=============================

タグクラウド
ビタミン 抗酸化作用 ミネラル 食物繊維 ポリフェノール 腸内環境 ダイエット 疲労回復 糖質 たんぱく質 コレステロール カルシウム アミノ酸 タンパク質 ビタミンC クエン酸 オートファジー 認知症予防 炭水化物 血糖値 亜鉛 お酒 エネルギー 不飽和脂肪酸 黒酢 食品添加物 アスパラギン酸 DHA 葉酸 ほうれん草 レスベラトロール いちじく 生活習慣病 EPA カロリー ケルセチン ブロッコリー 高血圧 アルコール 熱中症 果物 バランス 牡蠣 野菜 ゴーヤ うまみ みりん 整腸作用 らっきょう 果糖 野菜スープ おにぎり 5月病 ブルーベリー トマト 新玉ねぎ 脂質 ニガウリ うなぎ ピーマン 青魚 カレー ぶどう イモ りんご 抗酸化 スープ 手作り料理 シークワーサー お正月 黒豆 玉ねぎ オメガ3 アスパラガス スイカ ひじき ヨウ素 白菜 春野菜 デトックス 冷え性 ヨーグルト 副菜 大根 消化酵素 お弁当 人参 餃子 手作り 添加物 牛乳 豆乳 カニ 低カロリー 納豆 免疫 花粉症 ホタルイカ セカンドミール効果 豆腐 βカロテン 貧血 ビフィズス菌 ウルトラプロセスフード 脂肪燃焼 単鎖脂肪酸 ごはん ヘスペリジン みかん レンコン 美肌 便秘予防 さつまいも ビタミンB12 免疫活性 食事誘発性体熱産生 β-グルカン レジスタントスターチ 全粒粉 アスタキサンチン 美白 クロロゲン酸 アルブチン 血中コレステロール フィシン 善玉コレステロール オリーブ油 しめじ 老化予防 スペルミジン レモン クマリン 腸内細菌 紅麹 食品表示 無添加 菜の花 アブラナ科 さやえんどう グリーンピース 発酵食品 不老長寿 酵素 オリーブオイル ココナッツオイル きびなご サイリウム 指定野菜 スルフォラファン ガレット・デ・ロワ アーモンド セリ アミロペクチン 飲酒 肥満 ビタミンE 筋肉量 塩分 味噌汁 成長 プロテインドリンク プロテイン タウリン カレイ 抗炎症作用 サワラ ストレス緩和 タケノコ もやし 春キャベツ キクラゲ バナナ セロリ 海苔 いちご アンチエイジング ウロリチンA 動脈硬化 インフルエンザ 梅干し メタボ 味噌 オレイン酸 サプリメント ナス BCAA 夏バテ 浮腫み 白桃 カリウム MSG グルタミン酸ナトリウム 甘味料 発がん性 アスパルテーム β-カロテン 喘息 モロヘイヤ とうもろこし パイナップル シトルリン 老化防止 ポリアミン クルクミン 主食 食事のバランス 生姜 人工甘味料 セルロース シナモン
アーカイブ
資料請求(無料) メルマガ登録(無料)